2002-9-1

識者が見る創価学会・公明党
「第三文明」掲載の創価学会に貢献する識者、文化人の構造

乙骨正生(ジャーナリスト)

 学者や作家、評論家、ジャーナリストなどの識者、文化人、言論人などと称される人々の創価学会・公明党に対する姿勢・スタンスには、大別して四種類のパターンがある。
 まず第一は、本特集の浅見・松井論考に見られるように、創価学会・公明党に毅然と向き合い、問題点を検証・批判するパターン。  第二には創価学会・公明党に政教分離問題等、問題が多々あることは十分認識しているが、あえて触れずに見て見ぬ振りをするパターン。
 三つめは当初から創価学会・公明党問題に関心を払わず、無視黙殺を決め込むパターン。
 そして第四には創価学会・公明党に迎合ないしは翼賛するパターン。
 昭和四十四年暮れに発覚し、翌四十五年に一大社会問題となった言論出版妨害事件に象徴されるように、創価学会・公明党は、自らに批判的な言論に対しては、徹底的にこれを攻撃し排斥する排他的で批判拒否の体質をもっている。
 したがって創価学会・公明党に対して批判的な言論活動を行うと、徹底した攻撃や批判等に晒されることになる(筆者が、創価学会の機関紙誌や翼賛メディアによる誹謗中傷に晒され、創価学会から三件の名誉毀損訴訟を提訴されているように)。
 それゆえ多くの識者・文化人・言論人は、「さわらぬ神に祟りなし」とばかりに、創価学会・公明党に問題があることは十分認識していながら、あえて創価学会・公明党問題に関わることを避ける場合が多い。
 その結果、政権与党の一角を占め、日本の政界に大きな影響力を及ぼしている創価学会・公明党に対する正確な情報や、創価学会・公明党の問題点を抉り出す批判的言論は極めて乏しくなってきている。
 かつて言論出版妨害事件が表面化した際には、創価学会の外郭(直営企業)出版社である潮出版社が発刊する月刊誌「潮」への執筆を、作家の野坂昭如氏らが拒否するという良識的な動きがあった。
 だが、今日では、創価学会が「報道による人権侵害を許すな」との美名のもとに、創価学会に対する批判的な言論を行う個人や団体の名誉を著しく毀損していながら、名誉毀損の損害賠償額を飛躍的に高めることを主張して名誉毀損訴訟を濫発するなど、かつての言論出版妨害事件時に比して、より狡猾な形で批判的言論を封じ込めようとしているにもかかわらず、また、公明党が「憲法違反」だとして反対していた「通信傍受法(盗聴法)」に、自・公連立政権への参画を契機に前言を百八十度翻して賛成したり、個人情報の保護や人権救済に名を借りた言論抑圧法である「メディア規制法案」を推進しても、識者・文化人、言論人の間からは、かつての執筆拒否のような良識的な動きはほとんどみられない(唯一の例外は、それまで「潮」や「第三文明」にしばしば寄稿していた評論家の佐高信氏が、創価学会系メディアへの執筆を拒否することを明らかにしただけ)。
 創価学会は利用の対象  その背景には、本誌でもたびたび指摘しているように、構造不況の下、全国紙・地方紙、テレビ・ラジオが、広告出稿、番組提供、機関紙誌の印刷に池田大作本の出版と、莫大な金をマスコミ界に撒き散らす創価学会の金力の前に屈していることとほとんど同質の、言論人の創価学会に対する屈服現象があるからに他ならない。
 筆者は、以前、著名な宗教学者と懇談したおり、その宗教学者から「乙骨君、創価学会は批判する対象じゃなく、利用する対象なんだよ」といわれたことがあるが、この学者のように意図的かどうかはともかくとして、多くの識者、文化人、言論人が創価学会の前に沈黙を守るか、もしくは迎合しているのが、偽らざる日本の言論界の実状なのである。
 では、識者、文化人、言論人らの創価学会に対する迎合がどのようなものなのか。その実態の一面を、今回は潮出版社と並ぶ創価学会の外郭出版社の中核である第三文明社発行の月刊誌「第三文明」の今年上半期のいくつかの号をモデルケースとして検証してみたい。
 第三文明社は創価学会の対マスコミ、文化人、学者対策の一環として、潮出版社とともに設立された出版会社で、月刊誌「第三文明」や「灯台」などの雑誌を発行している。表向きは「平和・教育・文化をリードする総合出版社」などと称しているが、その実態は創価学会の一出版部門に他ならない。
 その事実は、法人登記簿等に記載された取締役等の一覧を見ればすぐに分かる。というのも、第三文明社の代表取締役には、創価学会の男子部長・青年部長を歴任し、その後公明党参議院議員となり、副委員長などを務めた多田省吾氏が、参議院議員引退後、就任している。以下、専務の松岡佑吉氏から平取締役の秋田谷幸雄氏にいたるまですべては錚々たる学会幹部、本部職員が就いており、監査役には創価大学出身で創価学会副会長の職にある松村光晃弁護士が就任している。
 潮出版社が発行する「潮」が、総合雑誌として「文藝春秋」や「現代」の向こうを張る形で刊行されているのに対し、「第三文明」は、一応、社会向けのポーズも取っているが、その内容は創価学会のプロパガンダと批判的言論に対する攻撃を柱としており、その意味では、より創価学会の機関誌的存在ということができる。
 では、今年上半期の「第三文明」のラインアップはどのようになっているだろうか。  例えば三月号のラインアップは次のようになっている。
 冒頭には池田大作創価学会名誉会長の連載「私の人生記録」の第一八回「韓国の名門・慶煕大学を訪問 創立の心は平和と教育の発信」
 続いては「人のために生きる」と題する「特集」記事。ここに多数の識者、文化人、言論人が登場する。そのラインアップを羅列しよう。
 「"自他ともに喜ぶ"のが幸福」堀田力(弁護士・「さわやか福祉財団」理事長)
 「自然保護こそ我が人生」C・W・ニコル(作家)
 「苦しんでいる人のところへ」寺田朗子(国境なき医師団日本会長)
 「互いに助け合う精神」森村進(一橋大学教授)
 「一冊の本から未来の人づくり」大月明子(「一冊の会」会長)
 「情は人のためならず」石上豊(創価大学教授)
 「対談 今こそ女性が平和拡大の対話を」北沢洋子(日本平和学会会長)/小熊則子(創価学会女性平和委員会委員長)
 以下、非学会員と思われる識者、文化人、言論人の記事としては、「論苑」として斎藤友紀雄日本いのち電話連盟常務理事の「大失業時代を生き抜く」、河田典由氏(フリーライター)による「"笑顔"を科学する」、川上範夫奈良女子大教授の「若者と癒しブーム」が。
 連載記事としては、音楽評論家・湯川れい子さんの「虹ネコ日記」、「遠藤憲一の役者魂」。スポーツジャーナリストの二宮清純氏の「勝利の条件12カ条 名伯楽の厳しさとやさしさ」、音楽評論家・前田祥丈氏の「ミュージックプレス02 21世紀の演歌の可能性」、動物写真家の吉野信氏の「野生の賛歌 ムース」などが掲載されている。
 また、グラビア等には、俳優の原田大二郎(「母校で学生に朗読を教える」)、女優・歌手の斉藤こず恵(「『鳩子』はいま、ブルースにジャズに」)、タレントの毒蝮三太夫(「お年寄りは毒舌を支持してくれる」)が登場。さらには世界各国の駐日大使を紹介する「大使のメッセージ」なる連載記事もあり、三月号にはスリランカ大使のカルナティラカ・アムヌガマ氏が登場している。
 学会PRに利用される識者記事  こうした一方で、創価学会の機関誌的性格の記事も多数掲載されている。
 まずは「座談会ニュース(2月度版)」として、「福岡県山田市の戦いに学ぶ/昭和27年『2月闘争』50周年/青年が学ぶ今月の御書/コラム正視眼」。次に「日蓮大聖人の激励に学ぶ 人間関係の悩み」や「学会歌誕生のとき 同志の歌」。
 そして杉山保男子部長、高木義介創価班(注・行事警備訓練組織)大学校事務局長、永石宇正牙城会(注・施設警備訓練組織)大学校事務局長によるてい談「青年の熱と力を語る 第1回 大学校生が勇敢に立ち上がった」。
 さらには創価学会・公明党に批判的な人物や団体を攻撃する記事として、
 「シリーズ 闇を斬る【5】 山崎正友の代弁人・乙骨正生」斉藤正男(ジャーナリスト)。
 「『言論のテロ』に加担した『妙観講』という"カルト集団"」。
 「東京・東村山の『問題市議』に賠償命令」。
 の三本の記事が掲載されている。
 このラインアップからも分かるように「第三文明」には、
 @池田大作氏及び創価学会礼賛記事……「私の人生記録」など
 A創価学会の指導・学習記事……「座談会ニュース」「てい談 青年の熱と力を語る」など
 B批判者・対立者攻撃記事……「シリーズ闇を斬る」など
 C一般論をちりばめながらそれとなく創価学会をアピールする記事……特集「人のために生きる」
 D「第三文明」を一般誌にみせかけるアリバイ記事……各種の識者、文化人、言論人、タレント等の記事
 の五種類の記事が混在していることが分かる。このパターンは一月号から六月号までまったく変わらず、一貫している。
 それにしても、特集記事に登場している人物は、皆、錚々たるメンバーである。しかも堀田氏やニコル氏、寺田さんなどの主張は、一般論としても十分評価できる内容となっている。また、湯川れい子さんや二宮清純氏などは、音楽評論家やスポーツジャーナリストとして、高く評価されている人物である。
 本誌四月十五日号の特集記事「善意につけ込む、学会系『第三文明』誌の捏造報道」には、大正大学の斎藤圓眞講師が、「第三文明」副編集長から「北アイルランド問題についてぜひ教えて下さい」との依頼に応じて、善意のレクチャーをしたところ、無断で「第三文明」の今年一月号に「阿部日顕の破壊活動を考える」との記事にデッチあげられた事実が詳細に報じられているが、堀田氏やニコル氏、寺田さんらが、創価学会にとって都合のよい情報操作を行うための媒体という「第三文明」の正体を認識していたかどうかはともかくとして(言論活動に携わる人間であれば、自分の原稿や談話、コメント等が掲載される雑誌媒体については、最低限、その性格、背景などを認識しておくのが普通だが)、結果的に、創価学会のイメージアップに寄与する形になっていることは否定できない。
 まして連載記事を執筆している湯川さんらは、自分の原稿が掲載されている「第三文明」を毎号見ているはずであり、「第三文明」がいかなる雑誌であるかの認識は十二分にもっているはずである。
 いずれにせよ「第三文明」の性格を十分知っていながら取材、執筆に応じているとすれば積極的迎合と言わざるをえないし、多少は知っている場合は消極的迎合と言えよう。そして全く知らなかった場合は利用されたと言うことになる。
 池田大作氏の会長就任記念日である五月三日を、創価学会は「創価学会の日」「創価学会母の日」と称している。
 その五月を迎えるにあたっての「第三文明」五月号の特集は、「母よ!」。ここには「第三文明」編集部記事の「創価の母の物語」をはじめ、十二本の特集記事が掲載されている。そのラインアップを紹介しよう。
 「偉大な母たちの物語」
 「危機に際して強くなる母」斎藤茂太(作家・精神科医)
 「生活の達人だった母」曾野綾子(作家)
 「山野愛子が遺したもの」山野正義(山野学苑理事長)
 「夢を追いかける母」大林素子(スポーツキャスター)
 「母の涙を笑顔に変えたい」オスマン・サンコン(タレント)
 「強く朗らかに生きる母」藤井江利子(ヤング・ミセス中央委員長)
 「偉人を育てた母」  「創価の母の物語」  「すべての母たちへの賛歌『母』」
 「日蓮大聖人と婦人の門下」西田正博(創価学会男子部教学部長)
 「対談 平和の時代は女性が創る」羽田澄子(映像作家)・上条範子(創価学会女性平和文化会議議長)
 このうち無署名の記事はすべて編集部の記事なのだろうが、「創価の母の物語」は副題に「広宣流布に生きる、学会婦人部の歴史」とあるように、創価学会婦人部のPR記事。そして「すべての母たちへの賛歌『母』」は、池田大作氏が作詞したとされる学会歌「母」の曲誕生の物語で、池田氏の女性尊重の姿勢を最大限アピールするものとなっている。
 騙されたような気が……
 こうした池田氏ならびに創価学会のPRに混じって斎藤茂太氏や曾野綾子さんなどの記事が掲載されているのである。
 筆者の自宅近くに住む主婦Kさんは、「第三文明」二月号の電車の中吊り広告を見て、その特集記事「対話力」に自分の好きな劇作家の一文があるので購入したが、冒頭に池田氏の「私の人生記録」や「師弟不二の団結で対話拡大――若き日の池田名誉会長の戦いに学ぶ」などの創価学会プロパガンダ記事、さらには「『週刊新潮』と売文屋に400万円の賠償命令」という記事で、筆者が槍玉にあげられているのを見て、驚き、同誌を筆者宅に届けてくれるとともに、「著名人の名前を見て、買ったが、本当に驚いた。騙されたような気がする」と、その感想を語っていた。
 著名な斎藤茂太氏や曾野綾子さんのネームバリューが、創価学会のイメージアップにどれほど寄与しているかは想像に難くない。
 この「第三文明」五月号には、他にも橋本恕元中国大使、矢吹晋横浜市立大学教授、松岡正剛編集工学研究所長、タレントのキャいーん・天野ひろゆき、ウド鈴木、指揮者の西本智実氏などが登場している。もちろん湯川さんや二宮氏の連載は継続中。
 そして批判者・対立者攻撃の記事は次の通り。
 「悪質デマを報道した愚劣な共産党」
 「大石寺参拝料をむしり取りの日蓮正宗」
 言論出版妨害事件で厳しい社会的批判を浴びた後、池田氏は最高首脳をはじめとする創価学会幹部らに、「創価学会は内部戦艦、外部豪華客船」と話し、創価学会は天下取りを目指す革命集団だが、見てくれそのまま戦闘集団だと社会の厳しい監視や批判に晒されるので、目先をごまかすために外部をソフトにデコレーションするとの指示を出した。
 「潮」や「第三文明」はそうした「デコレーション作戦」の先兵役を果たすとともに、高額の原稿料等で、学者、識者、文化人の取り込みをはかる戦略的拠点の役割を果たしている。
 そうした創価学会の意図を、知ってか知らずか、多くの学者、識者、文化人が、「第三文明」や「潮」さらには「聖教新聞」や「公明新聞」などに、喜々として寄稿ないしはインタビュー、談話などで登場しているのである。
 ちなみに一月号から六月号までの「第三文明」に登場した主な識者、文化人、言論人は以下の通り。
 一月号・大岡信氏(詩人)、松井孝典氏(東京大学教授)、柳沢佳子氏(生命科学者)、柏木哲夫氏(大阪大学教授)、榎彰氏(東海大学教授)、佐山和夫氏(ノンフィクション作家)、小原克博氏(同志社大学助教授)、上野英雄氏(環境ジャーナリスト)、掛布雅之氏(野球評論家)  二月号・竹内敏晴氏(演出家)、平田オリザ氏(劇作家・演出家)、中村幸昭氏(鳥羽水族館長)、大沢博氏(岩手大学名誉教授)、川上和久氏(明治学院大学教授)、田中義剛(タレント)、清水由貴子(タレント)  四月号・山口良治氏(伏見工業高校ラグビー部総監督)、清川妙氏(作家)、高田明和氏(浜松医科大学名誉教授)、於保哲外氏(精神科医)、堀幹夫氏(岐阜女子大学学長)、鎌田慧氏(ジャーナリスト)、原日出子(女優)  六月号・日下公人氏(東京財団会長)、畑村洋太郎氏(東京大学名誉教授)、キム・ヨンジャ(歌手)、村田喜代子氏(作家・学会員)、ジョリー・幸子氏(愛知淑徳大学大学院教授)、渋谷昌三氏(目白大学教授)、マギー司郎(マジシャン)、須藤温子(女優)
 総合雑誌の体裁をとり、「第三文明」よりも格上の「潮」には、河合隼雄文化庁長官をはじめ、梅原猛氏、猪瀬直樹氏ら、さらに多くの識者、文化人、言論人が寄稿ないしは登場する。そして「聖教新聞」や「公明新聞」などにも多くの学者、作家、評論家、ジャーナリスト、文化人、タレントらが原稿を執筆、ないしはインタビューなどで登場している。
 いま、日本の言論界は、巨大な創価学会の金権力、政治力の前にその良心や良識を失いはじめているのである。

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