2002-5-1

露わになった創価学会の金権体質
「八葉」事件の背後に潜む創価学会の影

乙骨 正生(ジャーナリスト)

 創価学会の指導マニュアルやノウハウ、人脈などを活用したと見られる"名誉会長"による犯罪が、警察によって摘発された。
 三月二十五日、警視庁、沖縄県警、愛媛県警の合同捜査本部による出資法違反(預かり金禁止)容疑で強制捜査を受けたのは、「一年で出資した金が倍になる」などと、この低金利時代に夢のような利殖話で出資を勧誘し、二年余の間に全国で約四万八千人から総額で一五六四億円もの金を集めていた健康食品販売の「全国八葉物流」(本社・沖縄県北谷町)と、関連会社の「八葉薬品」(同)。

 今後、警察は詐欺容疑で立件する構えだが、一月二十九日に東京地裁が破産宣告した際の「全国八葉物流」の負債総額は四九五億円。それだけに金のペーパー商法で大きな被害を出した豊田商事事件に迫る一大詐欺事件になる可能性が高いのだが、実は、この八葉グループと創価学会は、本誌創刊号の「信濃町探偵団」で指摘したように深い関係にある。

  というのも「全国八葉物流」「八葉薬品」「イーハトヴ」など関連会社数社を率いる八葉グループの田所収名誉会長が熱心な学会員であったのをはじめ、八葉グループの幹部と会員、いわば加害者と被害者に多くの学会員が含まれているからである。
 すでに創価学会広報室も、八葉問題を取り上げた週刊誌の取材に対して、「田所が会員であることが判明した後、組織内の審査会を開いた上で1月下旬に除名処分としました」(「週刊ポスト」四・一九号)と、一月下旬に「除名処分」にしているものの、田所名誉会長が学会員だったことは認めている。
 また本誌創刊号の「信濃町探偵団」で紹介したように、二月一日に開催された創価学会の本部幹部会では原田稔副理事長が、学会員に対して次のように「マルチ商法」に注意するよう呼びかけるとともに、学会本部は「マルチ商法」とは無関係とひたすら弁明に努めている。

  「先日、発表された昨年12月の完全失業率が5・6%と過去最悪を更新するなど、長引く不況はさらに深刻さを増しております。世間では、こうした世相を反映して金銭をめぐるトラブルや、それが原因の事件が多発しています。
 このような時に、必ずといってよいほど現れるのが、いわゆる『うまい話』です。銀行預金の利率が低いことを、ことさら強調し、高い利回りを期待させるような金融商品を売り込んだり、健康食品や化粧品などの販売で、ネズミ講まがいのマルチ商法を行ってくるなど、いずれも法の網をかいくぐり言葉巧みに消費者に取り入ってきます。(中略)
 なかには相手が学会員であると分かると、『私も学会員です』とか、『学会幹部のだれそれさんも利用しています』とか、ひどい場合は『学会本部もこの商品を承認しています』とか、なかには『100億円寄付した』とか、真っ赤なうそを並べる、悪質なものもあるようです。
 言うまでもありませんが、学会はこうした類のいわゆる『商売』とは一切関係がないことをはっきりと申し上げておきます。また今後も永久に、絶対にあり得ないということを、この場で断言しておきます」

 「一切関係がない」「永久に、絶対にあり得ない」と、原田発言には妙に力が入っているのだが、一月下旬の田所名誉会長の突然の除名処分と、二月一日の原田副理事長の発言が、一月二十九日の裁判所の破産宣告による「全国八葉物流」の破綻と関連していることは、まず間違いない。

 八葉グループは、末端の出資会員から特約店、代理店、販社、統括販社と、出資金に応じて幹部になるシステムになっているが、このうち販社を務めていた人物は、八葉には多くの学会員が出資していたとこう話す。
 「自分のところには二〇〇〇人ほどの会員がいたが、このうち約三〇〇人が学会員。私のような販社クラスにも多くの学会員がいた」
 実際、八葉グループの幹部名を記した名簿によれば、熊本県では創価学会の支部長や地区部長、地区婦人部長さらには元公明党市議などの名前が記載されている。当然、創価学会も八葉グループの動きを知悉していたはずである。別の八葉関係者は学会本部の広報室幹部が情報収集活動にあたっていたと次のように言う。

 「八葉が破綻の危機にあることは昨年秋頃には噂になっていた。だから、田所は昨年秋以降、猛烈な資金集めを指示、駆け込み的に二〇〇億円を集めるなど、被害が拡大した。当然、創価学会は八葉に多くの学会員が関わっていることを知っており、破綻した場合に備えて学会本部広報室の井上聖志渉外部長が、学会員の八葉幹部や会員の所などを回り、情報収集と八葉と学会との関係が表面化しないよう工作するなどしていた。だから会員に注意を促すならばもっと早い段階でもできたはず、だが創価学会はこれを見逃してきた。にもかかわらず一月末に突如、田所を除名し、二月一日に注意を喚起したのは、『八葉』の破綻を受けて、創価学会に類が及ばないようにするためのご都合主義的なアリバイ工作といわれても仕方ないだろう」

 こうした動きを受けて熊本県では、創価学会の熊本文化会館に学会員の八葉幹部を呼びつけ、創価学会の県幹部が叱責するとともに、公明党代議士を務めた創価大学出身の弁護士が、警察に被害届けを出すよう指示したとの情報もある。
 ではなぜ、多くの学会員が八葉に関わったのか。その背景には、田所名誉会長をはじめとする八葉側が、創価学会の主張や指導などのノウハウ、人脈を巧みに利用して、多くの学会員を勧誘していたからと見られている。

 「原田副理事長が本部幹部会で触れているように、八葉は巧みに創価学会を利用した。八葉のバックには創価学会がついているから大丈夫と言われ、投資した学会員も多いはず」(先述の販社氏)

 そもそも「八葉」という名称自体、「八葉蓮華」からとったものであることは明らかであり、学会本部のマークはこの「八葉蓮華」をデザイン化したもの。月刊の教学理論誌「大白蓮華」も「八葉蓮華」のことである。
 「陰の会長と言われた中西治雄総務が、責任をとる形で幕を引いた一億七五〇〇万円金庫事件。中西氏は金の出所は日蓮正宗の総本山である大石寺にあった土産物店の売り上げ金だと説明したが、その土産物を売る店と会社の名前も『八葉』だった。『八葉』というのは学会員にとって親しみやすい名称」(元創価学会幹部)

 しかも「全国八葉物流」のシンボルマークに使われている赤・黄・青の3色は、創価学会のシンボルカラーと同一。さらには「全国八葉物流」は、日本全国を一四方面に分け、その責任者をゾーン長と呼んでいたが、創価学会も全国の組織を一三方面に分けているし、圏長(ゾーン長)という役職もある。両者は極めて似通っているのである。
 その上、田所名誉会長の発言は、創価学会の池田大作名誉会長の発言とこれまたソックリなのである。創価学会も認めているように田所名誉会長はもともと学会員。しかも熱心な会員だったようだ。田所名誉会長がしばしば顔を見せていた沖縄の飲食店オーナーは次のように言う。

 「田所さんは熱心な学会員。よく自分は朝は五時に起きて勤行しているとか、御書(日蓮聖人の遺文)が分かっているなどと話していた。彼が社長ではなく会長、名誉会長になったのも池田大作さんを見習ったからなんじゃないですか」
 当然、田所名誉会長は、創価学会の指導マニュアルや組織運営のノウハウ、池田名誉会長の指導や発言に精通していたはずである。それだけに田所名誉会長は、創価学会の手法を援用して八葉グループを立ち上げ、運営、会員の獲得を図ったと見られるのである。
 「創価学会は会員を顧客とした巨大な宗教コングロマリットと見ることができる。田所はそのノウハウをまねた。だから池田名誉会長の発言を引用したのだろう」(創価学会問題に詳しい宗教評論家)

 実際、池田名誉会長と田代名誉会長の発言を比較すると、酷似していることは一目瞭然。例えば池田名誉会長は、その代表的著作(大作の代作だが)が『人間革命』であることに象徴されるように、「家庭革命」「地域革命」など、「革命」という言葉を多用する。創価学会の外郭企業の社長を集めた社長会の第一回の会合では、「広布の闘いで、政党、学校、文化、民音等も出来た。最後に残ったのは経済だ。これから、この社長会を中心に経済革命をする」と、「経済革命」を断行するとも発言している。
 一方、田所名誉会長も、「マルチ革命」の断行をキャッチフレーズにしていただけに、「革命」という言葉をしばしば口にする。機関紙「八葉だより」にもこんな発言が掲載されている。

 「組織拡大のために必死に尽くすならば、必ず『健康革命』も『経済革命』『家庭革命』も自然に出来ます。何故ならば我々のやっている事は、知らず知らずのうちに人を救っているからです。他人の為に他人を救って行くのが八葉精神であり、八葉の魂なのです」(八葉だより第4号)

 「経済革命」「家庭革命」と両者が口にする言葉は同一。しかも「組織のために尽くす」「人を救う」「八葉精神」「八葉の魂」と、田所名誉会長の指導内容は極めて宗教臭い。仮にこの発言にある「八葉精神」「八葉の魂」を「創価精神」「創価の魂」に置き換え、池田名誉会長の発言だとして「聖教新聞」に掲載しても、学会員は決して違和感を覚えないだろう。
 これ以外にも田所名誉会長の発言には、「異体同心(体は別でも心を一致させていくこと)」「師弟不二(師匠と弟子が一体になること)」などの創価学会用語が頻繁に使われている。そのいくつかを紹介しよう。

「八葉の陣列は、整ったの他人の苦を同苦と思い、多くの人々を救って行くことだ。新世紀序幕の今日、荘厳にしてけだかく美しい八葉蓮華山(富士山のこと)に誓願する」(八葉だより3号)

「水魚の思いをなして異体同心で組織を守って行こうと、また、組織は私の命です」(八葉だより第5号)

「異体同心の団結で、世界一仲の良い同志、世界一うるわしい組織を作ろう」(八葉だより第7号)

 いずれも池田名誉会長の指導のトーン、創価学会の指導のトーンとそっくりである。創価学会にあっては池田名誉会長との「師弟不二」の信心が肝要とされる。池田氏もまた、「弟子が立派になって師匠を守ってゆくことが、師弟不二である」(池田大作『指導要言集』)などと、弟子である学会員に対して頻繁に「師弟不二」を強調する。
 同様に田所名誉会長も、自分と会員との「師弟不二」をしばしば強調している。すでに経営破綻が懸念されていた昨年十二月一日発行の「八葉新聞」第14号に掲載された、「今月の道標」と題する「指導語録」では、組織の危機を乗り越えるために「師弟不二」の重要性が強調されている。

 「今回、1期〜10期までの282人ものフロンティアが結集し、総会ができることを大変嬉しく思います。皆さん方が本当に結束してくれれば、八葉は安泰です。我がフロンティアのように、素晴らしい人材が揃っている組織は他になく、本当に心強く思いました。徳川幕府の旗本三千騎にも匹敵するほどです。皆さん方は八葉の宝です。本当に真実、どんな障害が起ころうとも、永遠に絆を断ち切るわけにはいかない『師弟不二』でありたいと願っております」

 この指導の中で田所名誉会長は、池田名誉会長が指導の際に好んで使う太宰治原作の『走れメロス』を引用、自分には「走れメロスの如き使命」があるなどと語るとともに、八葉こそが「正義」であり、八葉が潰されてしまったら「正義が邪道に」なるなどと強調。集まったフロンティアに、金を集めろと檄を飛ばしている。自らのみを正義・善とし、他をすべて邪と排斥して金集めを指示する姿勢は、創価学会の独善的で排他的な体質、金権体質とウリ二つといえよう。
 また、こうした指導会の折に田所名誉会長はしばしば、「建設は死闘、破壊は一瞬」との言葉を使っていたという。だが、この言葉も池田名誉会長の受け売りである。池田名誉会長は、インドの詩歌協会から「桂冠詩人」という称号を得ていることが自慢であり、数多くの長編詩を発表(これもほとんど代作だが)しているが、その代表的な詩の一つに「建設の譜」と題するものがあり、そこには次のような一節がある。

 「破壊は一瞬、建設は死闘」

 ちなみに池田名誉会長は、田所名誉会長が引用していた『走れメロス』に由来する「メロスの真実」なる詩も発表している。
 それにしても類似商法ではないが、ここまで創価学会ならびに池田名誉会長の指導や発言とそっくりの発言を繰り返し、学会員を勧誘していた田所名誉会長と八葉グループの動きを、創価学会はなぜ放置していたのか、疑問である。そうした疑問を解くヒントとなるのは、先述の八葉関係者のこんな一言だ。

 「昨年一月に田所の妻の悦子が亡くなったが、一月四日、五日に行われた葬儀には池田大作から弔電が寄せられている。池田が弔電をよこすぐらいだから、創価学会は田所の動きを黙認していたのではないか」
 事実かどうかは分からないが「八葉」から創価学会に金が流れていたとの噂もある。少なくとも、熱心な学会員である田所名誉会長が財務に応じていたであろうことは想像に難くない。

 いずれにせよ八葉事件は、田所収氏という一学会員が、創価学会を模倣して「マルチ商法」を展開した単純な事件と見るべきではない。事件の背景には、創価学会の金権体質や、「信心すれば金が儲かる」式の現世利益を煽ることで、欲望(物欲)を肥大化させる創価学会の即物的体質が温床となっているのである。
 現役の組織幹部をはじめとする多くの学会員が「全国八葉物流」に投資し、加害者ならびに被害者になっていることがそのなによりの証左である。

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