2002-10-15

特集 携帯電話通話記録窃盗事件と創価学会の盗聴体質 

乙骨正生(ジャーナリスト)

 九月十三日に発覚した、創価学会幹部で創価大学の職員・OBらによるNTTドコモからの携帯電話の通信記録の盗み出し事件は、共産党宮本委員長宅盗聴事件に象徴される創価学会の盗聴体質をあらためて浮き彫りにするとともに、そのような盗聴体質がいまもなお、創価学会の組織内で脈々と受け継がれていることを窺わせるものとなった。
 事件は、創価大学剣道部監督で八王子地域の創価学会組織の男子部主任部長である田島稔容疑者の男女関係のもつれに起因する色恋沙汰とされているが、通信記録の盗み出しは田島容疑者の元不倫交際の相手だけにとどまらず、創価学会と対立する関係にある人物や団体の周辺にも及んでいるとの情報もある。
 本誌先号の「特報」や今号の特集記事にもあるように、田島容疑者の依頼を受けて創価大学の後輩である嘉村英二容疑者に通信記録の盗み出しを指示し、逮捕された創価大学学生課副課長の根津丈伸容疑者は、創価学会の全国副青年部長という要職にあったばかりか、「広宣部」という創価学会に対立する人物や団体の情報収集や攻撃に従事する組織に所属していた。
 そうした立場の根津容疑者が、嘉村容疑者を使嗾して犯した通信記録の盗み出しに、仮に創価学会と対立する関係にある人物や団体の関係者が含まれていたとなれば、これはもう単なる色恋沙汰の事件ではなく、創価学会が対立者の情報を収集するために行った組織的犯罪という様相を帯びてくる。それだけに事件の全容解明、事件の背景についての今後の捜査結果が注目される。
 それにしても、副青年部長という中枢幹部の立場にあった人物を含む幹部会員が、通信記録を盗み出すという人権侵害甚だしい犯罪を犯したにもかかわらず、創価学会はこの事件ついてなんら言及していない。
 創価学会は日頃、機関紙「聖教新聞」紙上に、秋谷栄之助会長や森田一哉理事長などの首脳幹部による座談会記事「人権と平和と社会を語る」を掲載、しきりに人権の尊重をアピールしている。だが、現役の創価学会幹部である根津容疑者らが犯した人権侵害を伴う犯罪行為については、謝罪どころか、事件そのものにもいまだに一言も触れないのである。
 もっとも創価学会は、東京地裁、東京高裁が北条浩会長の承認を含む創価学会の組織的犯行と認定した共産党宮本委員長宅盗聴事件についてすら、判決で命じられた百万円の損害賠償こそ宮本氏側に振り込んできたものの、今日にいたるまでただの一言も宮本氏や共産党側に謝罪していない。そうした無反省の体質だけに今回の事件についても創価学会は、知らぬ顔の半兵衛を決め込むつもりのようだ。
 ところで、前出の宮本盗聴事件をはじめ創価学会は、過去に複数の盗聴事件を起こしていることが山崎正友元創価学会顧問弁護士の告発によって明らかになっている。

 "虚偽"だった「事実無根」の池田発言  

昭和五十五年六月に創価学会から造反した山崎氏は、創価学会には宮本盗聴事件をはじめとする数々の社会的不正行為があることを明らかにした。これに対して創価学会は、山崎氏の造反とほぼ同時期に、山崎氏を三億円の恐喝ならびに五億円の恐喝未遂容疑で刑事告訴するとともに、山崎氏の告発した内容は、すべて「事実無根のデッチ上げ」だと反論した。  例えば、昭和五十六年四月に発刊された「週刊朝日」のインタビューの中で、創価学会の池田大作名誉会長は、山崎氏の告発について次のように発言している。
   「一切デッチあげで、事実無根」  同様に秋谷栄之助会長も、同年十一月に発刊された「サンデー毎日」のインタビューにおいて池田氏同様、山崎氏の告発について次のように全否定している。
 「創価学会に、いわれるような不正はない。山崎らが、ためにするためにつくりあげたものだ」
 だが、池田名誉会長が「一切デッチ上げで、事実無根」とした盗聴事件などの違法行為、社会的不正がすべて事実だったことは、他ならぬ創価学会の首脳幹部の発言によって裏付けられている。
 というのも、創価学会は対外的には山崎氏の告発をすべて「事実無根」としているが、山崎氏の恐喝を立証し事件化するためには、恐喝によって金を出さざるを得ない"畏怖すべき事実"があったことを認めざるを得ず、検察の取り調べや恐喝裁判の過程で、北条会長(昭和五十六年七月死去)や秋谷栄之助会長、八尋頼雄副会長(弁護士)などの首脳幹部が、やむなく盗聴事件等の社会的不正の事実を相次いで認めているからである。
 では、創価学会の首脳らはどのような社会的不正を認めたのだろうか。昭和五十六年二月二日・三日付の北条会長の検察官面前調書(検面調書)には、創価学会が畏怖した事実十一項目が次のように記載されている。

@宮本盗聴事件(共産党宮本委員長宅に盗聴器を仕掛け電話盗聴を行った事件)
A池田大作女性スキャンダル
B新宿替え玉投票事件(新宿の創価学会組織が組織ぐるみでアパートの投票入場券などを盗み出し、年格好の似た学会員を替え玉に仕立てて投票した事件)
C月刊ペン事件裏工作(池田氏の女性スキャンダルが審理された月刊ペン裁判で、池田氏の証人出廷を防ぐために、被告の隈部大蔵氏側の代理人に二千万円を渡す裏工作を行った事件)
D立正佼成会分断作戦(立正佼成会の元理事を使嗾して立正佼成会の組織的分断を図った事件)
E保田妙本寺情報収集(日蓮正宗の本山だった千葉県保田町にある妙本寺に対する盗聴等の情報収集活動)
F妙信講盗聴事件(日蓮正宗の講中の一つで創価学会と教義的に対立した妙信講と細井日達日蓮正宗法主との話し合いを盗聴した事件)
G千里ニュータウン問題(公明党の白木義一郎・田代冨士男の両参議院議員が、一般公募の千里ニュータウンの分譲住宅を創価学会の会合拠点として使用するために、議員特権を利用して裏口分譲してもらった事件)
H公明協会問題(公明党が払い下げてもらった国有地を聖教新聞社と交換した問題)
I119番事件(大阪府豊中市の小学校体育館で行われていた共産党の政談演説会を妨害するために、学会員が小学校が火事だとのニセ119番電話をし、消防車十台を出動させ妨害した事件)
J北条報告書問題(日蓮正宗を誹謗中傷し、日蓮正宗を創価学会の支配下に置くことを画策した文書)

 同様に山崎氏の恐喝容疑を審理する裁判の過程で、秋谷会長や八尋副会長は、千里ニュータウン問題や宮本盗聴事件、月刊ペン事件裏工作、妙信講盗聴事件をはじめ、富士宮市での農地不正、富士宮市や静岡県での政治的裏工作などについて、その事実を認めている。
 もっとも検面調書での北条発言をはじめ、裁判での秋谷発言など、学会側証人の発言は、いずれも山崎氏を罪に陥れることを目的としているだけに、違法行為等についての創価学会の責任についてはさまざまな予防線が張られている。それらを系統別に列記すると次のようになる。

 ク事実は認めるが、すべては山崎氏がやったものとする…宮本盗聴事件、立正佼成会分断作戦
 ケ事実は認めるが、学会本部や創価学会・公明党組織の関与を矮小化する…新宿替え玉投票事件、公明協会問題、各種の盗聴事件
 コ事実は認めるが、ある程度から先は山崎氏にやらせていたので知らないとする…月刊ペン事件裏工作
 サ全面的に否定を続ける……池田氏の女性スキャンダル

 このように予防線を張りながらも、創価学会の首脳幹部が宮本盗聴事件をはじめとする社会的不正の事実を相次いで認めたことから、山崎氏の告発は「一切デッチ上げ、事実無根」とした池田発言は、まったくの虚偽であったことが明らかになった。
  山崎元顧問弁護士の「独断専行」としたが……  これらの社会的不正のうち、宮本委員長宅盗聴事件について北条会長は、検面調書において次のように発言している。
 「次に学会にとって怖ろしかったのは、日本共産党委員長宮本顕治氏宅の電話盗聴事件でした。
 この件については、山崎弁護士は脅迫文言の中に明示してはおりませんが、事件の名前を挙げたのに続いて、『事態の深刻さが分かっているのは北条会長だ。ミサイルを二、三発ぶち込む』などと言っていることからして、場合によってはこのいわゆる宮本盗聴事件も事実を歪曲して公表するのではないかと大変怖れたのです。
 山崎弁護士は、その著書である『盗聴教団』の中で、あたかも当時副理事長であった私が関与したとか、行動資金を出したなど、まるで学会の承認の下で実行したかのごとく述べていますが、これは真っ赤な嘘です。(中略)
 その年(昭和四十五年)の三月から言論問題、学会と公明党の政教分離問題を衆議院予算委員会で共産党議員から追及され、頭が痛い思いをしていたのが、徐々におさまった時期でもあり、主義主張は違っていても、共産党とは話し合い路線で進もうとしていた時でしたから、軽率なことをしてしまった山崎弁護士には、正直なところ大変腹が立ったのです。それで、私は同弁護士に、
 えらいことをしてくれたな。
 と文句を言ったのです。そしたら同弁護士は、
 いずれにしても私が独断でやったことですから、私が責任をとってちゃんとします。勘弁して下さい。
 と詫びを言いました。
 同弁護士は、盗聴した理由として『共産党としては、学会との関係をどうしようとしているのか知っておいた方がいいと思って、学生部の者を使ってやった』などと、くどくど弁解していました。私は内心山崎弁護士ら学会員がやったことがバレないで済めばいいがなあと思っていました。
 そんなことで、山崎弁護士の告白で初めて内情を知った次第です」
 山崎氏を恐喝容疑で逮捕、起訴することを目的とした検面調書だけに、宮本盗聴事件はあくまでも山崎氏の独断専行と主張する北条会長だが、創価学会と妙信講(浅井昭衛講頭)が昭和四十七年に日蓮正宗の総本山・大石寺に建立された正本堂(注・平成十年に解体=本誌創刊号グラビア参照)の意義について対立、細井日達日蓮正宗法主が調停に立った妙信講問題に関して実行された盗聴事件については、渋々ながらも山崎氏に盗聴の了解を与えた事実を次のように述べている。
 「ところが、山崎弁護士が私に、
 浅井が、猊下がこう言った、ああ言ったと言って猊下を利用すると困ります。だから猊下と浅井の話の内容をきちんとテープに取っておかなければいけません。
 と盗聴することを言い出したので、私は、
 その必要はない。そんなことまでしなくていい。
 と言っていさめたのですが、同弁護士は、
 そんな大事な場面は絶対とっておかなければいけません。それは僕の方でやります。
 と言い、何としてでもやると言い張るので、その強引さに押し切られ、とうとう了解を与えてしまったのです。そして、七月六日、山崎弁護士は猊下と浅井親子の会談を盗聴して、テープにとってしまったのです。同弁護士の話によると、会談が行われると思われる一番良い部屋に、事前に発信器を隠して備えつけ、当日屋外で受信器により受信して会談内容を録音テープに収録したということでした」

 「創価学会の犯行」と認定した裁判所  

 昭和五十五年八月、山崎氏の告発を受けて宮本氏は、東京地裁に北条会長や山崎氏、そして実行犯であった廣野輝夫(元創価学会学生部主任部長)、竹岡誠治(元創価学会副男子部長・創価班全国委員長)、北林芳典(元学生部常任幹事)の各氏らを相手取って一千万円の損害賠償請求訴訟を提起した。裁判は五年の審理を経て昭和六十年四月に判決が言い渡されたが、判決の中で裁判所は、宮本委員長宅盗聴事件は北条会長の承認のもと、創価学会が行った組織的犯行だと認定した。
 その判決文には、北条氏の関与及び創価学会が行った数多くの盗聴行為が次のように認定されている。
 「被告山崎は、昭和四七年以降、学会ないし北条から資金等の提供を受け、被告廣野、同竹岡、同北林らを指揮して、少なくとも次の様な情報収集活動を行った。
 (ア)日達上人と浅井父子との、妙縁寺における会談の盗聴
 (イ)秋谷、原島、被告山崎と浅井父子らとの、常泉寺における七回にわたる対決討論の盗聴
 (ウ)妙信講に対する内部情報収集活動
 (エ)立正佼成会に対する内部情報収集活動
 (オ)学会と対立関係にあった松本勝彌に対する内部情報収集活動
 (カ)学会批判者の拠点である妙本寺おける内部情報収集活動
 (二) 仮に本件(宮本)電話盗聴が、被告山崎の独断によるものであるとすれば、北条ないし学会は、被告山崎に対し不信感を持つのが自然であると思われるのに、逆に本件電話盗聴発覚後も被告山崎の学会内部における活動を認め、情報収集、分析にあたらせていることは、北条ないし学会が被告山崎の本件電話盗聴を積極的に評価していたことを裏付けるに足りるものである」
 この判決を不服とした北条氏側は東京高裁に控訴したが、昭和六十三年四月、東京高裁は北条氏側の控訴を棄却。あらためて北条会長の関与を認定した。判決文には次のようにある。
 「本件電話盗聴が『寝耳に水』であったとの北条供述は、その際の北条の反応、事後処理の方法からしても、その後の山崎に対する扱い、処遇からしても、措信することができず、却って、北条の態度は、山崎から本件電話盗聴を事前に知らされ、これを了解していた者のそれとしてしか理解することができない」
 「北条以外の首脳が本件電話盗聴に関与したか否かはともあれ、北条が本件電話盗聴に関与したとの山崎供述の信用性は妨げられず、他に、以上の認定判断を覆すに足りる証拠はない」
 創価学会は、この東京高裁の判決を不服として最高裁に上告したが、週刊誌等の締め切りが終了した同年末、密かに上告を取り下げたため判決は確定した。だが、自ら上告を取り下げ、損害賠償を支払っておきながら、今日に至るも宮本氏、共産党側に謝罪していないことは前述のとおり。
 東京地裁、東京高裁の判決が認定しているように、創価学会は対立する人物や団体に対して、違法な盗聴行為を含む、さまざまな情報収集活動を続けてきたことは動かし難い歴史的事実なのである。
 今回、明らかにとなったNTTドコモの携帯電話の通信記録の盗み出しにいかなる背景があるかは、今後の捜査結果をまつしかないが、少なくとも自らを「人権と平和を世界精神にまで高める宗教団体」(平成十四年月二十九日/原田稔副理事長証言)とする創価学会には「盗聴」の二文字が色濃くつきまとっていることを、今回の事件はあらためて示したといえるだろう。

 TOPページへもどる