2004-6-1

特集/年金改悪法案と公明党
「年金未納」に凝縮された公明党の犯罪的体質

本誌編集部

 年金が危ない。その「不安解消」と称して提案された政府の年金法案は、公明党案を“丸飲み”したものだった。公明党はそれを、参院選での最大の売り物に、ともくろんだ。いわく「年金100年安心プラン」。なぜなら、これで「給付50%以上」を確保し、「保険料負担に歯止め」がかかるから。その二つともがまやかしだった。このことは後述する。

 欺瞞、狡猾、党利党略……公明党の体質を露呈

 まやかしが露呈する前に降って湧いたのが年金未納・未加入問題。小泉純一郎首相以下の閣僚たち、自民・民主・公明・社民の現前党首はじめ、共産党の一人を含めて全政党から未納議員が湧き出してきた。
 東京新聞5月14日付が、各党の未納議員率を載せている。いまだに(25日現在)公表を拒否している自民党(それ自体が論外だが)を除く政党のうち、公明党(57人中14人が未納)が24・6%で群を抜いている(民主党13・5%、社民党9・1%、共産党3・4%)。

 公明党の場合、未納率が高いだけではない。現職の党代表、幹事長、政調会長という三役全員が未納という醜態をさらけだした。それだけでなく、未納問題への対応自体に、この党の体質が凝縮されている。欺瞞、狡猾、そして党利党略……。国民から見れば犯罪的とさえいえる手法と体質である。
 3閣僚の年金未納が発覚したのは4月23日。公明党の態度は、終始、歯切れが悪く、党幹部の言動も変転を重ねた。公明新聞でそれを追うと、こんな流れになる。
 マスコミは3閣僚の未納を大きくとりあげ、国会でも問題になった。にもかかわらず、公明新聞はずっと沈黙をつづけた。3閣僚の未納を厳しく批判していた菅直人・民主党代表も未納だったことが判明したのが4月28日。それまで沈黙していた公明新聞が豹変する。翌29日付は1面4段見出しで「菅も未納」を伝えた。しかも、同時に発覚した福田康夫官房長官ら4閣僚の未納については、菅代表の記事の末尾にさりげなく書き添えるにとどめている。
 たしかに菅氏の対応にも見苦しさはあった。公明党はそれも見逃さない。「菅代表の言動は、天につばする行為だ。他党や他人を厳しく批判する資格はない(欧米視察の前に)まず説明し、おわびすることを最優先しなければならない」(東順治国対委員長・29日付)、「政治家としての資質が今、厳しく問われている」(30日付)と、批判をつづけた。
 その一方で、未納閣僚には「それぞれの閣僚が反省するとともに、不注意などでそういう問題が起きないような改善策をきちんと講ずべきだ」(神崎武法代表・29日付)と配慮する。そして公明党自身の納入状況については、依然として一切ふれない。
 5月6日、共産党が所属議員の調査結果を発表(1人未納)。ところが、“不倶戴天の敵”の不祥事にもかかわらず、公明新聞は1行も伝えていない。逆に7日付には「自公の両幹事長は『本人に任せるものであり、われわれがこうしろとか言うべきものではない』との考えを示した」と書いている。

 これが、翌8日付では再び一転する。冬柴鉄三幹事長の「議員一人ひとりが政治責任をかけて調査して、その結果を党に報告してもらいます。党はその情状に照らし、処分を含めてそれを早急に公表したい」とのコメントを載せた。これにならべて、福田官房長官辞任について「大変に残念であり、惜しまれる」「他の閣僚については、特に辞める必要はないだろう」と、神崎代表は再び配慮を示す。
 以後、連日のように「党内で現在調査中であり、未納者がいた場合は事情を聞いた上で処分し、公表したい」(神崎代表・9日付=まったく同じコメントが10日付にも登場)、「未納者がいればしっかり事情を聞いた上で、処分すべきものはきちんと処分して国民の前に公表したい」(同代表・11日付)といったコメントがつづく。12日付公明新聞の神崎コメントは「公表するための準備をしており、準備ができ次第、記者会見という形で公表したい」と、なぜか「処分」の語が消えた。
 そんな経過をたどったすえの5月12日、公明党はやっと調査結果を発表。フタを開けると“三役揃い踏み”である。自らについて「国民保険料を完済し、昨年60歳になり支払いを終えている(社会保険庁にも)確認済みだ」(5月1日付)としていた神崎代表もクロ。12日の会見では、「社会保険庁の確認通知書で完納と理解していたが、念のため、地元福岡の保険事務所に照会したところ、昨日、未納が判明した」(朝日13日付)と弁明した。
 しかし、オンライン化された年金記録は、年金番号によって全国どこの保険事務所でも把握できる。この仕組みからすると、神崎氏の弁明は信じがたいと言われても仕方ないのではないか。

 「未納隠し」で年金法案ゴリ押し

 公明党国会議員の4人に1人が未納だった。象徴的なのは山下栄一議員(参院大阪選挙区)の例だろう。山下議員は昨年7月、政府に質問主意書を出している。「国民年金保険料の納付状況及び収納対策に関する質問主意書」。質問のなかでこう述べている。
 「平成14年度の保険料の納入率が昭和36年に国民年金制度が発足して以来、最悪の62・8%になった」「国民年金制度の空洞化が深刻な状況に至っている」
 そう述べたうえで、15項目の質問をしている。――年度毎の実情を示せ。未加入者による歳入不足額は。納入率低下の要因を説明せよ。未納者・未加入者にどんな対策をとっているのか。どのような収納強化策を講じるのか……。
 質問でもわかるように、山下議員は年金未納の重大さを承知している。その当人が9年9ヵ月の未納者だった。「(未納により)保険料のしわ寄せを保険料の完納者や源泉徴収等によって納付を拒めない者等に押し付ける結果になっている」(質問主意書)ことを十分承知のうえで、その加害者になっていたのである。
 年金未納・未加入には様々な理由がある。年金制度そのものに不信を持つ人もいるだろう。不況やリストラで納めたくても納められない人もいるだろう。ひるがえって山下氏らには、巨額の議員歳費が入る。納められないのではなく、納めなかったのだ。自分のことは棚にあげて、国民からは徹底して取りたてろ――そう主張しているのだ。
 未納発覚後、山下議員は自分のホームページ(HP)で弁明を試みている。いわく、「このことが判明し、早速、党執行部に報告致しました」が、全議員の調査をするまで待てという党執行部の「指示に従っておりました」。自分としては早く公表したかったけれど“口止め”にあっていたという弁明である。

 当初のHPでは、未納に気づいたのは「四月のゴールデンウィークの直前」と書かれていたけれど、その部分が消えたという報道もある。それが事実なら、山下議員は2週間近くも口を閉ざしていたことになる。
 結局、口止めを解いて公表したのは、年金法案の衆院本会議可決(11日)の翌日。公明党は「繁多なスケジュールを抱えていたこともあり、結局、昨日(11日)夜まで調査を要しました」(公明新聞13日付)と弁明するけれど、「未納公表を法案の衆院通過後にしたことも『国会対策優先』という批判を浴びそうだ」(朝日13日付)と、マスコミも指摘している。
 実際、与党は徹頭徹尾、党利党略的にこの問題に対応してきた。4月28日の衆院厚労委で与党単独採決をしたあと、自公両党は5月6日、党首の未納問題で混迷する民主党との「3党合意」で衆院通過までの道筋をとりつけた。福田官房長官の辞任は、それを見届けたうえでのことだった。そして前述の通り、衆院本会議可決を待ったうえでの公明党の未納者発表となる。朝日16日付は「不信をひどくしたのは国会議員の『未納』自体より『未納隠し』でしゃにむに年金法案を通そうという態度である」と書いている。

 “まやかし”だった「100年安心プラン」

 この問題では「未納・非加入という脇の問題で、混乱を増幅させる」(読売18日付社説)とか、「議論が年金未納・未加入問題に終始するあまり、ますます本質から離れている」(産経同)という指摘もある。
 年金は、国民の相互扶助の精神のうえに成り立つ制度である。国民の信頼なしには成立しない。相互扶養の精神が欠如していたから未納問題が発生したのである。そのような議員が決める年金制度に、国民が信頼を寄せられるだろうか。本誌前号で山村明義氏は「税金などを含めて為政者が国民に負担を大きくしようとする場合、政治家が自らを律していることが大前提となる」と指摘している。年金保険料額を決める権限を持つのは、唯一、国会議員だ。だからこそ、その責任は重いのである。
 4人に1人という大量の未納議員を出しながら、公明党は党利党略的手法を駆使して年金法案を推進してきた。公明党の宣伝ビデオ『公明党がやりました』は、同年金法案を「公明党の主張にそった」ものだと自画自賛する。このビデオは、創価学会の地域座談会でも精力的に活用されてきたという。
 現行の国民年金保険料は1ヵ月1万3300円。これを13年間毎年引き上げ、13年後には1万6900円にする。厚生年金の給付額も毎年引き下げて現役世代の平均収入の50%にする(現在59・4%)。しかしその後は「保険料の上限は固定」し、給付も「50%以上を確保」する――政府案はこの二枚看板を掲げて登場した。だから「100年安心プラン」なのだと。
 公明党はそう宣伝してきた。公明新聞には「50%以上を確保」「これ以上、下げません」(給付)、「これ以上、上がりません」(保険料)という図入りの記事が、くり返し登場している。小泉首相や坂口力厚労相らも、国会でくり返しそう答弁してきた。
 その二つともがまやかしだったことが、衆院通過後に判明する。参院審議に入って、坂口厚労相らが「50%確保」は給付開始年だけで、その後は40%台に低下すること、保険料も名目賃金が上がるに従って上昇しつづけることを認めた。しかもそのモデル世帯はごく少数で、大半の国民は給付開始時から40%台である。政府はその資料を、衆院に提出する法案要項から除外していた。最初から“だまし”にかけていたのである。それが公明党の「100年安心プラン」だったのだ。
 年金制度の危機の、もう一つの要因が年金基金の流用である。ムダの典型とされる保養施設グリーンピアへの投入、関連公益法人への天下り官僚の役員報酬、社会保険庁長官らの交際費(香典、県人会費など)……と、年金給付以外に使われた保険料は5兆円を超すという。これが年金財政圧迫の要因であるにもかかわらず、ほとんど解明されていない。
 政府も官僚も、保険料を決める国会議員も「自己責任」をまったく果たしていない。そんな状況で、まやかし法案を通しよいのか。

 創価学会中央社会協議会の原田光治議長(さきに死去した野崎勲氏の後任)は、年金法案の衆院審議に先立つ4月8日付で産経新聞のインタビューに応じた。同協議会は国政選挙への対応を決める機関である。
 原田氏は年金法案を「安定的な給付を維持するには、ある程度負担も上がらざるを得ない。政府案は数値をしっかり出している点で評価できる」とし、「議論を尽くすことが政府・与党としての責務だ」と語っている。
 政府案の数値はまやかしだった。その議論も尽くさないまま衆院を通過させた。与党・公明党は原田氏の注文を裏切ったのだ。創価学会はこれをどう「評価」し、どう対処するのだろう。
 「支持者から言われるまでもなく、公明党は腐敗堕落の議員と戦え」――学会幹部による聖教新聞の連載座談会は、くり返しそう主張しているのだから。

 TOPページへもどる