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2004年11月01日

NTTドコモ携帯電話通話記録盗み出し事件に新たな展開

再び逮捕された創価大出身者
悪質な犯行を命じたのは誰か

山田直樹(ジャーナリスト)

逮捕者3人の共通項は「創価大学」

 はたしてパンドラの箱は開くのか?
 東京地検特捜部は10月13日、携帯電話の通話記録を不正に引き出したとして、電気通信事業法違反の疑いで「NTTドコモ」関連会社の元社員嘉村英二容疑者(28)=名古屋市中川区=を逮捕した。
 小誌読者なら、この名前を見てピンと来るはずだ。嘉村にはすでに同じ法律違反で懲役1年6カ月(執行猶予3年)の判決が下っている。この一件を第一事件としよう。事件の登場人物(被告)は他に二人いる。この3人が絡む第一事件の概要をおさらいする。
 まずは嘉村。創価大卒業生で、事件当時はドコモ関連会社社員(ドコモ・システムズ)だった。続いて懲役1年2カ月(執行猶予3年)の判決を受けたのが根津丈伸。同じく当時の役職は創価大学学生課副課長。そしてもうひとりの田島稔。創価大学剣道部監督(創価大職員)だった。
 ちなみに根津は紛れもない学会幹部。創価大学10期生で、全国副青年部長の役職(当時)にあり、同大出身者同窓会の「創友会」評議員でもあった。このオモテの顔とは別に、「広宣部」という主に学会批判者の動向調査などを担当する部署に在籍したこともあると言われる人物だ。また田島はもともと警視庁の巡査部長で、剣道の国際大会での優勝経験を買われ、95年に創大へスカウトされた。地元・八王子では男子部主任部長を務めていたこの人物への判決は、懲役1年(執行猶予3年)である。
 事件の展開はこうだった。田島が交際相手の“不倫”を勘繰り、携帯電話通話記録の入手を根津に依頼。根津は創価大学卒業生の嘉村を選んで、通話記録の出力・印字を実行させた。田島はこの記録を根拠に、関係者へ嫌がらせの電話を繰り返したため、不審に思ったその人物がドコモに相談して、事の経緯が露顕した――というもの。
 事件の3人には創価学会員という共通項がある。だが、02年9月、3人の逮捕が報道されて経緯が明らかになっても、メディアは彼らの共通項=学会トライアングルに触れようとはしなかった。
 
起訴事件のほかにも秘密侵害

 ところが逮捕からしばらく立って、事件はまったく別の様相を見せ始める。
 02年9月19日朝、東京在住の福原由紀子さんのもとに一本の電話が入る。警視庁深川署の美崎と名乗る刑事からだった。
 内容はこうだ。ふたつの携帯電話番号を述べて、福原さんはそれらを所有しているかと質問。その通りだと答えると、さらにこう聞かれたのだった。
 「最近、料金プランの変更やその関連のトラブルでドコモに電話をしたことはないか」
 身に覚えがないと否定した福原さんは、1台は娘の恵さん(仮名)が使用していると付け加えた。すると美崎刑事は、恵さんへ自分宛てに電話するよう依頼した。恵さんは当日午後、美崎刑事に電話。母親同様の質問を受けたが、否定した。
 翌日、深川署を訪れた福原さん母子を待っていたのは、驚愕の事態だった。担当刑事たちの説明を要約するとこうなる。
 「2台の携帯電話の通話料金明細システムが(02年)3月7日にアクセスされ、それ以前1〜2カ月の記録が漏洩した。料金プラン変更やトラブル発生、クレーム等で確認のためアクセスするのは違法でないが、それでないのにアクセスしたのは違法だ」
 嘉村ら学会員トライアングルが引き起こした事件を、福原さんらはどこか遠いところで起きたものとしか見ていなかった。だが、創価学会員ならやりかねないという思いはあった。というのも、福原さんは学会と日蓮正宗の対立の渦中で、意を決し脱会した人物だったからだ。これを理由に創価大学教員の夫とは協議離婚を余儀なくされ、以来、母娘が寄り添うように暮らしてきた。その過程で、福原さんへは学会員と思われる人物からの面談強要、嫌がらせが相次いだ。こうした現実と、通話記録の盗み出しがひとつの点として交わってしまったのである。
 深川署は福原さんと同じく、9月19日にいまひとりの女性に電話をかけていた。電話の主は「カワト刑事」である。カワトは美崎刑事より直截的に切り出している。
 「最近の事件(第一事件)のことを知っているか」
 この女性、佐藤せい子さんは日蓮正宗の有力信徒団体・妙観講の副講頭という要職にある。創価学会からの嫌がらせは枚挙に暇なく、それだけで1冊の本が出来上がるくらいだ。であっても、第一事件と自分に係わりがあるとは想像すら出来なかった。カワト刑事は続けて、福原さんが受けた質問を行う。この時カワトは、はっきりこう言った。
 「あなた(佐藤さん)の携帯電話通話記録が調べられた形跡がある。心当たりはあるか」
 当然だが、心当たりは大いにあった。実際にそれまで、佐藤さんの電話に盗聴の形跡があったのだ。佐藤さんは捜査に協力すると述べ、翌日、深川署に出向くと事態はおよそ別の方向に進んでいるのだった。即ち、「佐藤さんのケースだと、刑事事件は成立しない」というのである。
 結局、佐藤さんが縷々申し述べても、調書は採取されず終い。刑事事件として成立しない理由はこうだ。ドコモには、加入者の住所・氏名を扱う顧客システムと通話記録(時間・月日)を扱う料金明細システムがあって、前者にアクセスしても犯罪にならない――。
 一方、福原さんに対しては20日、前日の母娘の供述調書を読み上げて、そそくさと署名・捺印させただけで終了した。形式的な手続きだったと福原さんは語るのである。その後も捜査資料を手交したりしたが、結局それは11月8日に返却されて、事件の捜査は沙汰止みになってしまった。
 
解明待たれる「氏名不詳の創価学会関係者」

 本誌が繰り返し報じてきたように、公明党と警視庁の間にはただならぬ「関係」がある。竹入義勝元公明党委員長、龍年光元公明党都議、あるいは山崎正友元創価学会顧問弁護士、また藤原行正元都議らの証言、著作で明らかなように、公明党が警視庁と「良好」な関係を築き、接待を繰り返してきたことは紛れもない事実だ。福原さんや佐藤さんに降りかかった災厄が少なくとも警視庁レベルで払いのけられぬとすれば、これは検察庁に告発して捜査を要請するしかない。
 そこで彼女たちは03年5月14日、東京地検に告発を行った。被告発人は前出の嘉村と「氏名不詳の創価学会関係者複数名」。(告発状全文は小誌03年5月15日号参照)
 そして告発から5カ月。ようやく地検は捜査に踏み切り、嘉村を逮捕したのだった。この間、東京地検に対する事件捜査要請の署名活動が活発に行われ、その数1万数千に達している。しかしながら、こうした正当な真相究明運動に対しても、学会員と目される集団からの妨害活動が行われた事実も付記しなければなるまい。
 では、この告発の最大のポイントはどこか。それは捜査で解明すべき最重要課題と言い換えても良い。告発状が記したように、本件が嘉村一人の単独犯とは到底思えない。佐藤さんは捜査員から、「盗み出された記録は数百人分」と聞かされている。逆に言えば、告発があったから捜査に着手したのであり、それ以外にどれほどの通話記録盗み出しがあったのかは、いまだ深い闇の中だ。嘉村がそれを一人の意志で遂行したのだとすれば、当然、その情報を売買した可能性も想定しうる。また、単なる「通話記録収集マニア」だと自白して逃れるやもしれぬ。
 しかし、ここで忘れてならない点がある。少なくとも福原さんの通話記録不正アクセスは、第一事件より前に実行されたのである。第一事件でのそれは、02年4月25日。一方、福原さんは02年3月7日で、この日より1〜2カ月前のものアクセスされている。もしここに第一事件のようなトライアングルが成立すると、どうなるか。解明すべきは、まさにそこだ。嘉村に犯行を命じたのは、いったい誰なのか。新たな人物の名前が表出する可能性もある。
 警察が半ば投げ出した案件を、地検特捜部が捜査する――。地検に相当の自信と証拠がなければ、このような手段は採用されない。だからといって、本当に立件するかどうか、100パーセントの保証もない。恐らく小誌が読者の目に触れる頃には、結論が下されているだろう。

投稿者 Forum21 : 2004年11月01日 03:13

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